※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2012年6月10-11日

第4回命名規約輪読会

照屋 清之介

 

章16. 種階級群におけるタイプ

条72. 一般条項

72.5. 担名タイプとしての適任性

次の子条72.5.1.~6.のどれかに該当する標本でなければ、種階級群名義タクソンの担名タイプとして適任ではない。

 

72.5.1 一個体の動物の全体標本か部分標本、一個体の動物による化石化した仕業(生痕化石)の標本、(1931 年になる前に名前が与えられていることを条件に)一個体の原生動物による仕業の標本。

 

72.5.2 一つの群体の全体標本か部分標本(サンゴのような刺胞動物の群体など)。

ただし、次の二つの条件がある。

①無性生殖か栄養生殖による増殖する群体であること。

②群体が自然の状態で形成されること。

 

72.5.3. 遺骸自体が代替された化石。

 

72.5.4 ハパントタイプ。原生生物に限定される。多くの個体からなる1 つまたは1式の標本。条72.5.1.と違って1 個体に由来する必要はなく、条72.5.2.と違って単一の実体になっている必要もない。

 

72.5.5. 顕微鏡観察用の一つの標本。

勧告72C. 重要な個体に印をつけること。複数の個体が含まれる場合に識別できるようにするため。

 

72.5.6. 図・記載に使われた標本。国際植物命名規約では図を担名タイプとすることができるため、動物の規約ではそれを認めないとする条文。

 

72.6. すでに担名タイプである標本。

既に担名タイプに使われている個体を、更に別の名義種・名義亜種の担名タイプとして使っても構わないという条項。

 

72.7. 新置換名で示された名義種階級群タクソンの担名タイプ。

新置換名を与えられたタクソンの担名タイプは、古い名前の時の担名タイプに等しい。したがって新置換名の提唱時に、新規に別個の標本を担名タイプと指定しても無効である。

一方、古い名前のときに担名タイプが固定されていない場合は、新たに固定された標本が、古い名前の時のタクソンの担名タイプとしても固定されたことになる。

 



条72.4.4.によりタイプとして固定される


条72.8. 名義タイプ亜種の担名タイプ。

名義タイプ亜種の担名タイプはその元である名義種の担名タイプと同一である。このことは名義タイプ亜種の定義(条47.1)からも言える。


条72.9. 複数の名義種階級群タクソンの統合。

担名タイプが不変のままであるという当たり前の規定。分類学的タクソンで有効名となった名義種(亜種)の担名タイプを、無効名となった名義種(亜種)の担名タイプに替えてはならない。

 

条72.10. 担名タイプの価値。

担名タイプ(ホロタイプ、シンタイプ、レクトタイプ、ネオタイプ)は学名の担い手であり、世界共通の参照基準であることから、それなりの処遇をされなければならない。

 

勧告72D. 担名タイプのラベルづけ。 ホロタイプ、シンタイプ、レクトタイプ、ネオタイプにはその地位を示すラベルをつけるべき。

 

勧告72E. ラベル上の情報の公表。 担名タイプを指定する場合、同じ著作物中でその標本のラベルの全情報を示すべき。

 

勧告72F. 研究機関の責任。 担名タイプの保管施設は次の責任を負うべきである

72F.1. 担名タイプの標本を他の標本から識別できるように保つこと。

72F.2. 保管の安全性に対して必要なだけの管理を行うこと。

72F.3. 研究目的での担名タイプの利用を可能にすること。

72F.4. 管理下にある担名タイプの標本のリストを出版すること。

72F.5. 担名タイプの標本の情報を、要請に応じてできる限り通知すること。