※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.
また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.
2017年6月4-5日
第9回命名規約輪読会
瀬尾 絵理子
条68. 原公表中で固定されたタイプ種
条68.1 固定方法における優先順位
1 つ、もしくは、複数の種をタイプ種として固定する場合、
条68.2~68.5 に該当する場合は、優先権の順位は次の通りである。
勧告68A タイプ固定の引用
本条に規定する複数の方法が該当する場合は、有効な固定のみを引用するべき
条68.2 原指定によるタイプ種
ある名義属階級群タクソンを設立したときに名義種1 種をタイプ種として明白に指定[条67.5]した場合、その名義種がタイプ種(原指定によるタイプ)である。但、条70.3適用時を除く。
68.2.1. 新しい名義属・名義亜属の設立時に、複数の新しい種があった場合
+どの種がタイプ種であるか明白に指定されていない場合
+ただ1 種に対してのみ ”新属新種”・”gen. n., sp. n.”と宣言されている状態
= その名義種1 種が原指定だとみなす。
68.2.2. 新しい名義属階級群タクソンがタイプ種の明白な指定なしに設立されたとき
設立時に含められた新しい名義種[条67.2]1 種の種階級群名に、
typicus, -a, -um もしくは typus が入っている名義種がある
= その名義種1 種が原指定だとみなす。
条68.3 単型によるタイプ種
ある単一の分類学的種に対して、名義属階級群タクソンが設立される
+その種が適格名で示されている場合
= その名義種がタイプ種である。【単型による固定】
以上は、関係しない。
68.3.1.
ある新属の設立時に、亜属に分割され、その名義タイプ亜属が1 種のみを含む場合
→ その名義種が、新しい名義族の単型によるタイプ、だとみなす。
条68.4 完全同語反復によるタイプ種
ある名義属階級群タクソンに設立時に含められた[条67.2]
+ 有効なある種階級群名 or 引用されている異名synonym
+ その属階級群タクソンの学名と綴りが同じ
+ その種小名が適格である
= その種小名で示される名義種階級群タクソンがタイプ種である。
【完全同語反復によるタイプ】
例)
Aus 属 Smith — Aus xus (Brown) … 異名 Bus xus aus Robinson
この場合は、Aus のタイプ種は、Bus aus Robinson
条68.5 “リンネ式同語反復”によるタイプ種
1931 年以降に設立された名義属階級群タクソンに、
+ 設立時に含められた名義種[条67.2] のうち、
+ ただ1 種の異名リスト中に、
+ 新しい属階級群名と同じ綴りの一語からなる1757 年以前の学名が引用されている
= その名義種がタイプ種である。
例)Castor 属 Linnaeus, 1758
Castor fiber … 異名リスト中 “Castor Gesner pisc. 185” [一語の学名]
リンネ式同語反復により、Castor fiber Linnaeus, 1758 が、Castor 属のタイプ種となる。
条68.6. 過去の著者による誤適用もしくは誤同定を故意に用いて引用された学名でのタイプ種の固定
条11.10 および条67.13 を見よ。
※原文は条67.13 だが、大久保(2006)によると条67.13.1 が正しいとのこと