※あくまで勉強会の報告書ですので,間違った解釈が含まれる可能性があります.また,形式は統一していないことをご承知おきください.内容に関するコメントなどは是非事務局までお願いいたします.

 

また、本報告書は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」と「大久保 憲秀 (2006) 『動物学名の仕組み 国際動物命名規約第4版の読み方』」を参照しています。その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

2013年6月9-10日

第5回命名規約輪読会

関谷薫

 

章3. 公表の要件

条 7. 現在(1999 年よりも後)「公表したこと」になる著作物

 

1) 条 8. 1. 1. ~ 8. 1. 3. を満たし、条 9. によって除外されない紙に印刷された著作物である

2) 紙に印刷されていない場合は、条 8. 1. 1. ~ 8. 1. 3. を満たし、条 9. によって除外されず、かつ条8.6.を満たさなければならない

 

8. 2. 公表は棄権し得る

公表されてない著作物として扱われる(公表されていない著作物はいかなる情報も引用できない)

 

8. 3. 学名と行為は棄権し得る→ 条 8. 7. 1. を見よ

命名法的行為の出典としては不適格。情報の出典としては利用できる。

 

勧告 8E. 棄権宣言を含めること. 編集者および出版者は, 新学名, その学名を適格にするかもしれない情報, あるいは新しい命名法的行為を, 公的かつ永続的な科学的記録を目的とせずに発行する著作物(集会の予稿集, 集会で配布する予定の論文の紹介など)へ含めないようにするべきである.そのような文書が棄権宣言(条 8. 2 を見よ)を確かに含んでいることを確認して, そこで最初に公表される新学名が, 意図せずに動物命名法へ入ったりしないように, かつ, 別の著作物のなかで公表しようとする意図の通りになるようにするべきである.

→ 編集者および著者は、集会の予稿集などに載せる文章に命名法的行為が含まれていないか、含まれている場合は棄権宣言が含まれているかを確認すべき。

 

勧告 9A. 著者は, 要旨が意図しない公表の場となることを避けるべきである. おもに参加者に対して発行する目的で学会発表論文の要旨を投稿する著者は, そのような著作物中の学名や動物命名法に影響を与えそうな行為が意図せずに公表されてしまわないようにするべきである. その著者は,要旨集が適切な棄権宣言[条8. 2]を含んでいることを確認するべきである.

 

[用語集] 棄権宣言:著作物のなかで著者, 編者, または出版者が行うもので, (1)その著作物全体, あるいは, (2) それに含まれる学名や命名法的行為のすべてまたは特定部分を, それぞれ動物命名法の目的のために除外する声明.→ 前回のレジュメ「棄権宣言の有無の確認は個人で行うことが望ましい」

 

各自で棄権宣言を行うことも重要か

 

条 9. 公表したことにならないもの

 

9.9.

 

集会, シポジウム, コロキウム, 会議などの参加者を主たる対象として発行される場合の,記事, 論文, ポスター, 講演の文書, その他の類似物の要旨.この後に勧告9A がある。すなわち、条 9.9. に該当して「公表したことにならない」と考えられる場合でも、念のため棄権宣言を行うことが推奨される。

【疑問点】

博士論文は条8. を満たし、条9. によって除外されない著作物となり得るのか?

case 1: 1981 年に受理された学位論文中で、20 種近い種が記載されている。(その後一般投稿論文としては発表されていない)。こういったケースは公表したことになるのか? また、命名法的行為において適格な著作物となるのか?

 

 

  • 複数册印刷され、大学図書館などに収められている
  • 閲覧や複写文献の取り寄せによって入手が可能
  • 本条については、改正前のものに沿ってレジュメを作成してしまった。2012 年9 月に改正されたあとの命名規約には、電子投稿について変更点がある。また、学位論文についても「例」として触れられている箇所があるので、そちらを参照のこと。